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2017-05-10 17:46:00

ものづくること

ものをつくる人間として、ものについて考えてみた。

 

 

この世にいっぱい溢れている、もの、モノ、物、者・・・

 

えっと、そもそも”もの”って一体なんだ?

僕のイメージとしては、

ひらがなやカタカナで書くと、「もの」「モノ」で、ざっくりと抽象的な印象だ。

しかし、漢字で書いてみると、「物」「者」で、一気に具体的な印象になる。

 

 

なんだか腑に落ちないので、ちょっと調べて、簡単に記してみました。

 

「もの」・・・事よりは割合に具体的に感じたり考えたりできる対象。

「モノ」・・・『ひとつの』を意味する。(モノクロ・モノトーン・モノレールなど)*monoも同じ。

「物」・・・天地間にある、有形無形の一切のもの。

「者」・・・動作や行為の主体となる人。

 

・・・なるほど。

 

 

では、僕が普段行っている「もの」づくりとは何か?

 

消去法で考えてみる・・・

 

まず、僕がせっせと人を作っているはずはないので、「者」づくりではない。

が、しかし「もの」をつくるという行為の主体となっている僕は「者」である。

うーん、ややこしい。

 

続いて、「モノ」これは言わずもがな、違いますよね。

 

次は、「もの」”事よりは具体的に感じたり考えたりできる対象”

では「事」とは何なのか?という疑問がわいてきます。

という事で調べてみる・・・

 

「事」・・・われわれの生活の中に現れたり、われわれがしたりする事柄。

 

ふむ、なるほど。

 

つまり「事」とは日々瞬間瞬間に現れては消える、抽象的な現象や、出来事のことを言っているようです。

今このブログを書いているカフェでも、いろいろな人が出入りして色んな行動や会話をしていますし、僕自身もパソコンに向かってキーボードを叩いています。これらを「事」(が起こっている)と呼ぶのでしょうか。

そして、「事」が起こるためには、思考が働き(想像も含む)時には感情や欲望が動く必要があるのでしょう。

しかし、それは人間が起こす「事」であって、自然の動きによって世の中の状況や環境が変動していく「事」もあるでしょう。

「事」って結局はなんだか分かるような分からないようなことなのですね。

 

 

では話を戻して、再び「もの」についてです。

抽象的な現象である「事」よりも具体的に感じたり考えたりできる対象が「もの」でした。

ということは、これは目に見えないもの(事)と目に見えるもの(もの)という風に考えても良いのではないかなと。

確かに、身の回りや目の前に、現れ起こっている現象は全て目に見えているから、それに気づく事ができますよね。(それ以外の感覚器官で感知する場合もありますが)

しかし、その目に見える「もの」に影響(現象を起こすきっかけや原動力)を与えていたのは、目に見えていない「事」だったのではないでしょうか?

 

僕はこのように考えます。「事」「もの」は表裏一体で、切っても切れない関係なのでは?と。

 

「事」が起こって「もの」が現れる。

 

 

最後に「物」が残っていますが、そこを考える前に、なんとなく僕の中で答えが見えてきました。

 

 

僕は、自分の作品である「もの」を作るとき、当たり前に多くの作家さんがそうだと思うのですが、「こんなものを作ろうかな」「この作品なら、この素材を使ってみようかな」「こんなパーツをつけてみようかな」「こんな人に似合いそうだな」などなど、まずは思考を働かせて作品のイメージを広げていきます。その時にイメージのラフスケッチをすることもあります。

 

このようにしてまずは、思考や想像をします。つまり「事」を起こすのです。

そしてそのイメージを、実際に手を使って、形ある「もの」に仕上げていく。

 

「事」を起こすだけでは抽象的な思考やイメージしかなく、たいした意味を持たないので、ハッキリと人に説明ができませんが、形となって現れた「もの」は具体的に説明がしやすくなり、「これは何を表現しているのか」と意味を持たせたりすることもできます。

 

 

まとめてみると、

僕にとって”ものづくり”とは意味のあるものであり、自分の中で渦巻く思考やイメージを形にする行為であり、

では、その思考やイメージの源泉はどこにあるのかというと、もともと頭の中にあるのではなく、自然や環境、状況や人との関係性の中でぐるぐると渦巻き巡っている現象、つまり「事」があるからこそ、僕の頭の中には思考やイメージが生まれてくるわけです。

”ものづくり”とはただの作家活動ではなく、「事」を起こした自己との対話であり、その源泉との対話であるわけです。

 

自然に赴けば、自然とお話をします。

人と向き合えば、その人とお話をします。

苦しい状況や、痛みのある状況では肉体とお話をします。

ものをつくる状況では、ものとお話をします。

 

”ものづくり”とは、ただ売るためだけの作品を量産するというシステマチックな行為ではなく、ひとつひとつのものたちと行われる対話なのではないかなというところに落ち着きました。

 

 

追伸:

そして「物」とは、”天地間にある、有形無形の一切のもの”でした。

万物という言葉があるように、物質的な物も、抽象的な言葉なども含めてすべて物であると・・・

この世界は物で溢れています。物があるから世界はあり、物があるから「良い、悪い」「幸、不幸」という判断や価値観が生まれる。

物があるから欲望が生まれる。

物とは私たち人間の人生に大きな影響をあたえる”もの”なのですね。

だからこそ物とのつきあい方や向き合い方を、学び知る必要があるのでしょう。